防音設計の留意点
木造(住宅および音楽室・防音室)の防音設計について、前提となる基本事項やマニュアルに記載されていない留意点など重要な内容を記述します。※防音材の概要については、別途「防音材」のページで説明します。
*関連記事:防音設計の基本となる防音材
【遮音・制振・吸音の基本機能】
遮音は文字通り「音を遮断する」ことですが、通常、音を完全に遮断する防音材というものは木造においては存在しないので、現象としては「音を減衰させる」と表現したほうが現実的かと思います。
それはつなぎ目から遮音欠損が生じるだけではなく、面材として遮断できない音は透過するからです。
制振は「防振」と「絶縁」に分けることができますが、絶縁は面材として振動音(固体音)を減衰させることと、壁及び床の接触点を共振させないようにパッキンやコーキング材などで縁を切ることを指します。機能として複合化される場合が多いので、厳密に分類することには余り意味は無いとお考え下さい。
吸音は音を吸収して減衰させることですが、吸音性は多様な建築材・製品が保有する機能でもあり、防音材や木材・木製品など遮音性と吸音性などを兼ね備えているものが少なくないです。「遮音・制振・吸音」の3つの機能は、施工要領(工法を含む)によっても効果が異なります。最も一般的な製品はグラスウール・ロックウールです。
【吸音材と断熱材】
グラスウールは、木造防音室を設計する場合は「吸音性のある断熱材」として位置づけられます。吸音専用材に比べて吸音性(吸音率)は低いです。※ただし、グラスウールも防湿フィルムに包まれていない裸の吸音材もありますが、性能にばらつきが大きく、あくまで補助的な製品として設計したほうが無難です。ロックウールも同様ですが、吸音専用材として製品化されたものが確立されており、製品の選択肢も限定されているので設計仕様として一般的です。
なお、吸音材は密度が高くなるほど、中高音域の吸音率が大きくなります。厚さを大きくすると幅広い周波数帯において吸音率が大きくなりますので、必要に応じて防音構造の厚さ・構成を調整します。
【遮音材の留意点】
硬質遮音材は「制振効果」が小さく、コインシデンスが起きやすいという特徴があります。代表的な製品は「石膏ボード」「ALC」「遮音パネル」ですが、ジョイント部分から音漏れしやすいことに留意してください。
また、面密度の小さい遮音材(約3kg/m2以下)は1000Hz以上の高音域でさえ軽減効果が小さいので、製品選定には要注意です。代表的な製品には、市販の遮音シートがありますが、制振効果も期待できません。
低音(125Hz以下)を減衰させるには、約6kg/m2以上の面密度が必要であり、柔軟性のある製品が望ましいです。
特に、空間及び荷重の制約で「薄い防音対策」が必要とされる場合、遮音材の面密度や柔軟性等の製品特性だけでなく、防音材の周波数特性に応じて製品を組合せることが重要になります。この点が木造の防音設計の難しいところだと思います。